「空売り」で利益が出る仕組み

株式のニュースで「空売り」という言葉を目にすることがあります。「空」というからには、実在しないものを売るわけです。空売りは、自分が持っていない株を借りてきて売ることなのです。なぜそのようなことをするのでしょうか。株を借りれば手数料(借りる利息と考えてよいでしょう)を払う必要があるので、損をするだけに思えます。ところがこれで利益が上がることがあるのです。まず、借りてきた株を売却します。するとその株は値下がりしますので、そこで買い戻せば売却した時の株価と買い戻した時の株価の差額がもうかるという仕組みです。

通常、その株の発行数の規模に対してある程度の割合を占める数の株を売らないと株価は下がりませんが、機関投資家でもない限りそのような資金はありません。ですから、「空売り」でターゲットとするのは値下がりしそうな株なのです。通常の株取引は値上がりしそうな株を買うのですから、全く逆の取引行動になります。そのような株を都合よく保有している事は期待できませんので、ターゲットとなる株に目をつけて借りてくるという訳です。

空売りで下げ相場で逆に儲ける

通常、株価が下げ相場であれば、保有している株の価値は下がるので利益を挙げる手段はなさそうです。しかし、空売りは値下がりする株によって利益を得ることができる方法なので、極端に言えばリーマン・ショックのような大変な下げ相場であってもこれを駆使すれば儲けるチャンスはあったということなのです。また、信用取引口座があれば、手持ちの資金の3倍で「信用取引」が可能になります。(FXで言うとレバレッジをかけるのと同じ行為です。)

しかし、空売りする際には担保となる資金が必要です。そこで「塩漬け株」を所有している人は、これを担保として空売りをすることができるのです。「塩漬け株」とは、値下がりが続き、売っても大損になるので売るに売れずに放置されている株のことを指します。それを担保として他の取引に活用できるのですから魅力的な話です。空売りをするためには、まずは証券会社で「信用取引口座」を作る必要があります。かつては富裕者しか作れなかったこの口座ですが、今ではネット証券会社で保証金が30万円程度から作れるようになりました。

株取引の中でもリスキーな方法

先ほど信用取引の原理を「レバレッジ」と言いましたが、FXと同じメリットとデメリットが存在します。株式を保有するということはその企業の「有限責任社員」となることであり、損害の責任は株式の額面を上回ることはありません。しかし、信用取引は自己資金の3倍のレバレッジをかけているのと同じですから、目論見が外れてターゲットにした株が思うように値下がりしない場合などは損害も通常の3倍となってしまう可能性があります。株を借りる利息(「逆日歩」と呼ばれます。)といったコストもかかるので、それを上回る利益が出ないと赤字になってしまいます。

また、空売りには最大で六ヶ月の期限が設けられており、この期限内で一度買い戻し決済をしなければならないのです。逆に株価が上がっていればこれも損害をこうむる可能性があります。「ハイリターン」には「ハイリスク」が必ず伴うというのは投資では変わらぬ理なのです。そして最も根本的な問題ですが、値下がりしそうな株がどれかを判断することは、値上がりしそうな株を見極めるのと同じくらい難しいことだということです。

空売りしようとしたが取引できない、なぜ?

株価を操作することにもなりかねない「空売り」には規制がいくつかあります。空売りで利益を得ようとしても、この規制に引っかかってしまうと大きな損失を出すことにもなりかねません。まず、「トリガー価格」という用語が登場します。これは当日の基準値段の10%下、と定められていて、ある株がこの価格になると規制が発動します。つまり規制が発動するトリガー(引き金)の価格、という訳です。まず、株価が下落した際には直近の公表価格以下では空売りができなくなります。

逆に直近価格から株価が上昇した場合はその値段と同じ価格なら空売りはできるのです。トリガー価格が設定された株は上記のような場合、51単元(銘柄ごとに決まっている株の最小取引株数)以上を空売りすることができなくなるのです。いずれも株価操作を防ぎ、取引の公平性を保とうという規制です。その他にも空売りには様々な規制がありますが、自分で空売りを行わない場合でも概要を理解しておくことは株式投資をする上で損にはならないはずです。

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